山口裕之さん、人気料理店サヴァカシェフ

遠州ナビ山下隆宏

2006年04月11日 10:52


菊川のかなり山奥?にあるフレンチ店。予約じゃなきゃ食べられないとのことで、まだ食したことはないが、かなり人気になっている。この取材記事を読めば感じると思うが、これだけこだわれば、良い料理を出せるでしょう。やまちゃんの、行ってみたいお店ナンバー1
 
「サヴァカ」でいただけるのは、手のこんだクラシカルなフレンチと、ビストロっぽい旬いちばんの味わい。食材のほとんどは地元産を使用。御前崎まで毎朝魚介を仕入れに出向き、各地の市場を歩き、私たちが初めて耳にするような名の野菜を農家の人に試験的に栽培してもらう。
 父親の仕事の関係上、幼い頃から全国各地の特産物を味わえる環境にあったおかげで、食材の確かな味を知る。修行先のフレンチレストランでは、本場の技術と最高水準の味を体と舌で覚えた。その後、独立を考えたが、自分に足りない分野を補うためもう一度修行の道を歩んだ。家族とともにいちばん辛い時期を過ごすことになったのだ。
 「サヴァカ」のオープンを機に親の住む菊川にやってきて現在3年目。四季の移り変わり、自然の豊かさを目の当たりにし、空気のおいしさを実感。そして食材そのもののおいしさと豊富さにも驚嘆した。説明が必要なほどの場所に店を構えたが、ランチ時の予約が1週間先まで埋まっているほどの人気ぶりで、この店では場所の不便さは問題ではない。
 「いい仕事をしたい」と独立した。最低限、自分が満足できる味が提供できるようにしたいだけだというが、実は、それでは利益はほとんどでないのだという。一緒にお店を創っている人、契約農家の人、周囲で支えてくれている人たちの誠意に、山口さんは雇われオーナーのような感覚で応える意識だとか。経営には興味がないというだけあって、やはり職人なのだ。オープン当初から比べると料理形態が変わったのも、お客さんによって創られているお店らしい。「料理をするということは、素材を越えなければいけない」と、変わりつつある旬の一番おいしい時期だけ食材を使い、なじみの食材もひと味違った調理法で提供する。とはいえ、自分だけの思いではなく、お店として機能していけるよう数多い料理の中でも誰にでも食べやすい料理をピックアップしているが、それゆえに腕を発揮できないジレンマにも悩む。「お客さんの食文化の意識と、そのときどきにある中でいい意味の妥協点を見つけながら、ともに成長していきたい」と語る。何ごとにも自分の手を通さなければ気がすまないから、できる限りのものはなんでもやる。負けん気が強くてひとつのことに執着する40歳、穏やかな表情の下にある芯の強さが窺えた。
 最近、10年ずっと悩んでいたヨーグルトのアイスクリームがようやく完成した。シンプルなだけに難しい、こういうものをうまくできた時がなによりの喜びだという。「料理に答えはない」と、その過程を楽しんでいる姿勢を見ていると、一生かけて山口さんの味が完成することだろうと思えてくる。

2006.1.17 遠州ナビ別冊 ReasoN より